トレーニングを科学する

Q&A

学会誌「トレーニング科学」に掲載された記事をもとに、トレーニングに関する科学的Tipsを紹介します。

Q. 鉄棒け上がりのコツを教えてください。

Q. スポーツビジョントレーニングは効果があるのでしょうか?

Q. 長距離走は体力アップと走り方の技術改善のどちらが大切ですか?

Q. ボート・ローイング技術について教えてください

Q. ウエイトトレーニングのトレーニング構成について教えてください

Q. クロスカントリースキー先進国と日本とのトレーニング構成は違うのでしょうか?

Q. スポーツ傷害はどの部位が一番多いのでしょうか?

Q. 長期にわたる体力トレーニングを追った研究はありますか?特に女性の体力トレーニングに興味があります

Q. 牽引水泳トレーニングについて教えてください?

Q. 運動するとお腹が空きますが、やはり運動するとたくさん食べて栄養バランスも自然と良くなるのでしょうか?

Q. トレーニング期間の体調コンディションを把握する方法はありませんか?

Q. ボールゲームのルールはよく変更されるようですが、なぜなのでしょうか?

Q. 水泳は体力と技術のどちらが大切なのでしょうか?

Q. 柔軟性は何で決まるのでしょうか?

Q. 鉄棒け上がりのコツを教えてください。

A.
け上がりの練習中に成功した場合と失敗した場合の動きを解析した結果があります。この結果から指摘された動きのポイントは、1)前ふりからの振れ戻りの際に、股関節を曲げる動きより先に肩関節を伸ばす動きがきてはいけないこと、2)振れ戻りの際の身体の速さは、成否には関係しないこと、3)ただし振れ戻りの際の速さについては、そのタイミングが重要で、振れ戻りの後半に比較的速くなることが大切であること、でした。これを指導に役立てるには、それぞれを実現するためにどのように口頭指導すべきかを検討しなくてはなりませんが、特に3)について、これを実現するためにどのような細かい動作が必要かが、現在詳細に検討されています。


出典:土屋純ほか. 鉄棒運動におけるけ上がりの運動技術に関する研究. トレーニング科学 16(1):15-21, 2004



Q. スポーツビジョントレーニングは効果があるのでしょうか?

A.
1週間に5回のスポーツビジョントレーニングをした社会人野球選手としない選手を比較すると、動的な視覚能力(素早く動くものをみる能力)があがることがわかっています。


出典:前田明ほか. 選手主導型Quality Controlシステムを用いた社会人野球選手のスポーツビジョントレーニングの効果. トレーニング科学, 14(2), 85-90, 2002



Q. 長距離走は体力アップと走り方の技術改善のどちらが大切ですか?

A.
大学陸上部新入部員がトレーニングを行った際に、1500mのレースタイムが持久走の体力(最大酸素摂取量)と技術(ランニングの経済性。エネルギーをいかに推進力に有効利用するかの指標)のどちらの影響が強いかを調べた結果があります。8週間のトレーニング前後で比較したところ、技術はほとんど変わりませんでしたが、体力が10%程度増加し、これにともないレースタイムも6%程度良くなっていました。少なくともトレーニング初期には体力改善による影響が強いようです。


出典:山地啓司ほか. 最大酸素摂取量及びランニングの経済性からみた1500m走の記録改善の要因. トレーニング科学 16(1):23-31, 2004



Q. ボート・ローイング技術について教えてください

A.
ボート競技では大きなパワーを出せることが、もちろん重要ですが、反復をする際に、大きなぶれがなく安定して同じように反復し続けることが大切であるという結果が示されています。安定して反復し続けることで、オールの動きやボートの姿勢が安定し、クラッチで逃げるエネルギーが減少するようです。これによりボートの推進効率が改善され、パフォーマンスが向上するようです。


出典:下田学ほか. ローイングパワーの安定性がボートの艇速に及ぼす効果-大学ボート選手を対象として-. トレーニング科学 16(1):33-40, 2004



Q. ウエイトトレーニングのトレーニング構成について教えてください

A.
女子ウエイトリフティング世界選手権前16週間についてトレーニング構成を調べた研究があります。前半はダッシュや腹筋などの基礎トレーニングが多く実施されていました。競技種目は16週にわたって徐々に漸増していました。その負荷強度はスナッチで70-80%、クリーン&ジャークで70-90%、スクワットで80-90%程度の強度が中心でした。特に最後の4週で高強度のトレーニング頻度が高かったようです。


出典:菊池俊美. 女子ウエイトリフティング選手の世界選手権大会に向けてのトレーニング構成の分析. 16(1):41-54, 2004



Q. クロスカントリースキー先進国と日本とのトレーニング構成は違うのでしょうか?

A.
フィンランドナショナルチームと日本ナショナルチームのトレーニング内容を比較した結果があります。5月から12月のシーズン前トレーニングを含む期間についての結果でした。その結果わかったことは、日本選手は1)トレーニング量そのものが少ない(80%程度)、2)スキーに乗る時間が少ない(70%程度)、3)春から秋にかけての筋力トレーニング量が少ない(70%程度)、4)低強度(血中乳酸が1-2mmol/l)での基礎持久力のためのトレーニングが少ない(80%程度)、ということでした。


出典:竹田正樹ほか. クロスカントリスキー競技における全日本ナショナルチームとフィンランドナショナルチームのトレーニング比較. トレーニング科学 16(1): 55-62, 2004



Q. スポーツ傷害はどの部位が一番多いのでしょうか?

A.
「筑波大学スポーツクリニック」の10年間にわたる診療の記録があります。のべ利用数は59278名で、部位別には足関節、腰部、膝関節の傷害が順に多かったということです。傷害内容では足関節捻挫が圧倒的に多かったということでした。


出典:白木仁ほか. 筑波大学スポーツクリニックにおける過去10年間のアスレチックリハビリテーション活動の報告-1992年から2001年の資料より-. トレーニング科学 16(1): 63-79, 2004



Q. 長期にわたる体力トレーニングを追った研究はありますか?特に女性の体力トレーニングに興味があります

A.
1992年に日本で初めて女性の人力飛行記録を達成した方がいます。この方が1994年から6年間にわたりトレーニングを行い、日本では男女問わず未達成の360度旋回に挑戦した際のトレーニング記録があります。自転車エルゴメータを用いてトレーニング記録をつけました。180Wのインターバルトレーニングで、トレーニング開始時には1分間であったペダリング時間が、474日目で5ふん39秒、975日目で6ふん29秒に増加しましたが、その後は増加がみられませんでした。500日目以降ではトレーニング頻度の影響を強く受け、3日/週未満の場合に減少する傾向がありました。ペダリング持続時間が減った時期にスクワットトレーニングに集中したところ、持久力が増加する結果も見られました。


出典:堀琴乃ほか. 女性パイロットによる人力飛行を目指した6年間の体力トレーニングの事例研究. トレーニング科学 16(2):135-148, 2004



Q. 牽引水泳トレーニングについて教えてください?

A.
市販の自転車エルゴメータを改良して水泳時のパワーを測った研究があります。50mの最高泳速と測定されたパワーに間に関係がみられました。また同時に、牽引水泳時の負荷についての提案もなされています。


出典:塩野谷明ほか. 電磁ブレーキ式負荷荷重型エルゴメータを利用したSemi-tethered Swimming時パワーの測定. トレーニング科学 16(2):149-156, 2004



Q. 運動するとお腹が空きますが、やはり運動するとたくさん食べて栄養バランスも自然と良くなるのでしょうか?

A.
運動教室に2年間参加した中高齢者の、自然な栄養摂取状況の変化を調べた研究があります。その結果、女性では一部の栄養充足率が増加したけれども、すべてにおいて改善することはなかった。男性では変化が認められなかった。このことから、運動指導のみでは栄養摂取に改善はみられず、より健康増進を進めるには栄養面でも積極的な介入が必要であることがわかりました。


出典:坂戸洋子ほか. 中高齢者に対する運動教室の実施が栄養摂取状況に及ぼす影響. トレーニング科学 16(2): 157-164, 2004



Q. トレーニング期間の体調コンディションを把握する方法はありませんか?

A.
一つのアイデアとして、心拍変動を使って心身のコンディションを把握する方法が提案されています。ヨーロッパ、特にドイツの心拍変動に関する研究を調査し、この方法をスポーツ領域で活用する視点から紹介している以下の論文を参考にしてください。


出典:加納樹里ほか. スポーツの場における心拍変動の活用-ドイツを中心としたヨーーロッパの研究動向について-. トレーニング科学 16(2): 165-178, 2004

Q. パワーを高めるには最大筋力の30%程度でトレーニングするのが良いと聞きましたが、その負荷だけでトレーニングし続ければ良いのでしょうか?

A.
最大筋力の30%でパワーがもっとも高く、この負荷強度でトレーニングすることがパワーを高めるのにもっとも効果的であることがわかっています。これに加えて、数種の負荷でトレーニングを加えた複合トレーニングの方が効果的であることが、最新の研究で明らかになりました。8週間のトレーニングでわかったことは、30%負荷だけでなく、60%および100%負荷を加えた方が最大パワーが高まることでした。さらに複合負荷でトレーニングした方がディトレーニング時にも高いレベルが維持されることもわかりました。


出典:田路秀樹ほか. 筋パワーに及ぼす複合トレーニングの効果-特に力?速度関係に及ぼす静的及び動的筋力トレーニングの影響について-. トレーニング科学 13(3):127-136, 2002



Q. ボールゲームのルールはよく変更されるようですが、なぜなのでしょうか?

A.
ラグビーのラインアウトに関する10年間のルール変更とプレーの変化の関係を検討した研究があります。1991年当時はラインアウトはゲーム再開のプレーとしてゲーム中に最も頻繁に起こりますが、スロー側のボール獲得率が低く、反則発生率も高く、攻撃基盤として機能してないことがわかりました。この状況を改善するためにルール変更が行われ、望ましい方向に機能したようです。その後、ルールを利用して選手がプレースタイルを変更し、これを容認するようにルールの改善が次第に行われていった様子も明らかとなりました。


出典:中川昭. ラグビーのラインアウトに関する近年のルール変更とプレーの変化の相互作用. トレーニング科学 13(3): 137-148, 2002



Q. 水泳は体力と技術のどちらが大切なのでしょうか?

A.
一概にはいえませんが、8週間のトレーニング期間中に400m水泳の競技成績と有酸素能力の関係をみた結果があります。有酸素能力がほぼ頭打ちになったあとも400mタイムはのびたということで、体力に依存せず技術で泳速をのばす効果も明らかにあるようです。


出典:Shimoyama Y et al. Changes in interval swimming performance, OBLA speed and 400m swimming performance after eight week swim training. トレーニング科学 13(3): 149-156, 2002

Q. 柔軟性は何で決まるのでしょうか?

A.
柔軟性と筋肉や腱の形態特性(断面積、長さ)や筋力と関係があるかを調べた研究があります。その結果、筋の横断面積が関節可動域の主な規定因子であることがわかりました。つまり筋肉の横断面積が小さいほど柔軟性が高いことが明らかになりました。


出典:小田俊明ほか. 足関節における柔軟性と下腿三頭筋の機能的・形態的特性との関係. トレーニング科学 13(3): 157-166, 2002


学会誌最新号

事務局

〒466-8666 愛知県名古屋市昭和区八事本町 101-2(14 号館)
中京大学 国際教養学部 渡邊研究室内
電話:052-835-7941
担当:渡邊航平(学会理事)、佐藤綾